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 転勤族だった私は、何処に立っても山と川の望める風光明媚な町(金沢)での暮らしの中で、新聞の投稿が始まりました。徒然は私の宝物です。花の画像は庭の花です。
by violasan
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小さな命

結婚して一年目の春のこと。
 母校の同窓会の知らせが入った。まだ、若く元気だった私は、ワクワクして手土産を山ほど買い込んで電車に乗り込んだ。
 ワクワクしていた理由は、久しぶりの帰省だったこともあるが、お腹の中に小さな命が芽生えていたからだ。
 
実家のある町の駅のホームに降り立った。両手の荷物の重さも忘れて、デパートのベビー売り場に行き、男の子かしら?女の子かしらと想像しながら、かわいらしいベビー服を手にしていた。
 
しかし、そんな気分も長くは続かなかった。
実家に泊まった翌日、体調に異常を感じて病院に行くと『切迫流産』と診断された。
入院の準備のための帰宅もゆるされず、診察室から病室に移った。
二十年以上も前のことで、ただ小さな命が育ってくれることを願い安静にするしかなかった。
結局、十日過ぎても小さな命の確認はできなかった。ただ、「小さな命よ。ごめんね」と泣き崩れた。
 
小さな命_c0051044_18213864.jpg私の軽率な行動さえなければ、成人した男の子に育っているはずだった。

平成9年6月北国新聞掲載
by violasan | 2005-02-05 18:23 | 徒然
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