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 転勤族だった私は、何処に立っても山と川の望める風光明媚な町(金沢)での暮らしの中で、新聞の投稿が始まりました。徒然は私の宝物です。花の画像は庭の花です。
by violasan
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転居通知

名古屋に住む母が住み慣れた家から引っ越すことになり、手伝いに行った。私が結婚す
るまで育った家でもある。
 
柱の一本一本が想い出を宿していた。伊勢湾台風の浸水後もあった。当時珍しかった二
階建ての我が家がご近所の避難場所となりお祭り騒ぎになったことが甦る。
 「この家は、後一週間ほどで取り壊されるのよ」
と寂しそうな母の言葉だった。思わず目がうるんだ。
 
主人の転勤で八回も引っ越した私にとっては、この家こそが想い出のたくさんつまった我が家だ。空家になった古家をしっかり焼き付けて金沢に帰った。
 
引越しの疲れもいえた頃、母から電話が入った。
 「昨日、家の前を通ったらショベルカーが容赦なく壊していた」
と淡々といった。
 
母は、去年七十歳にして独学で調理師の免許を獲得した。愛知県内の最高年齢の受験
者であり合格者ある。そんな母でも亡き父と二人三脚で築いた家を七十歳にして離れるこ
とになった心痛は想像もできない。
 
しばらくして、母から転居通知が届いた。どんな気持でこの葉書をポストにいれたのであ
ろうか?

平成9年6月12日北国新聞掲載
転居通知_c0051044_16501811.jpg

by violasan | 2005-02-05 16:51
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